[1st impression]


シーンごとの時間の流れを表現できていて凄いと思いました。槍が止まった、槍が刺さった、ステンドグラスの破片が落ちる、空気が変貌する、血が滴る、そういった瞬間が遅く感じるか、いやに速く感じるかというコントロールが抜群です。もんぢゅさんが例えとしてKAKERIを出していましたが、あちらは静動のめりはりで月姫らしさを出そうとしていたのに対し、こちらは液体が滑るような速度でホロウの不気味さを演出しています。


ホロウはよく十夜の焼き直しと言われています。まったくその通りなのですが、得体の知れなさ、不気味さという新しい要素を加えることに成功した作品だと思っています。最初に挿入された小話はその象徴ですね。そういう雰囲気をM@Dとして再現できているのは、私の知る限りこれしかないです。そして再現する際、血というものに注目したのがとても面白いです。バゼットの流血がロゴとなって波となって拡散していく、というのはきのこ魔術とリンクしてるかもしれないと想像が広げられます。何より血に濡れる聖女ってエロくていいですね。


シンプルなビートに合わせてキャラ紹介から再現された聖杯戦争の場面を描写する、というのがおおまかな作品の流れだと思うのですが、その流れがゲームのエンディングに繋がらず、ループの再会となっているところが一筋縄ではいかないなと思いました。また、ホロウでのハイライトの1つであるアーチャー戦等を省き、バゼットとカレンのエピソードに終始しているため、無駄が全然ないです。同じ素材を使っていながら、Cinderella-StairsやPRETENDERと全然似た印象を抱かないのはそのためでしょう。あの猥雑さ・ごちゃごちゃ感が型月の魅力だと思ってるので、より原作を思い出すのは比較として挙げた2作ですが、こちらはそのぶん作家さんの個性が出た作品になっていると思います。