[1st impression]

やっぱりこの作品の良い所は、splineさんのいうように視聴者に対する見せ方の上手さでしょう。
全体的に動きが速いわけでもなく、情報の密度としても決して多くはないけれど、どうしてか画面に引き込まれてしまう。それがどうしてかと何度も見ながら考えていたのですが、この作品全体に流れるテンポの良さが生物的に心地よさを生み出している。
説明すると。1:05あたりから何度か出てくる、青い光が中央から湧きでてきて徐々に広がるシーンってのは、テキストにある通りこの月姫という作品の主人公である志貴の心臓の鼓動を表してるんだと思うのですが、このテンポの取り方、すなわち、各小節ごとに、1拍目で画面を切り替え、2,3,4とそれが発散していく、というリズムがこの作品では、最初から1:15辺りまでずっと一貫して続いている。こういった一定のテンポ、そしてこの曲の1分間辺り120拍という心拍数よりやや早めのビートが、見る人の脳にとって心地良い感覚を生み出しつつも、ある種の緊張感も生み出している。
そして、そのテンポが崩れて脳が違和感を感じたところに1:26のあの展開。何度見てもあのシーンにハッとしてしまうってのは、そういう展開のコントロールによるものではないかと。そして、その後は元のテンポを取り戻すので、終わりに近づくにつれて脳が落ち着きを取り戻し、もう一度最初からループ・・・・・・。こうなるともう止められませんw


あと、言うまでもないかもしれませんが、色の使い方も上手ですよね。モノトーンを除けば基本的には青と赤にまとめられているわけですが、青は志貴の目の色や先述の心臓の鼓動の色に表れている通り、志貴の日常、というか平穏なシーンを表す色。それに対して赤は、0:48のロアのシーンや死線の色に表れているように死・吸血鬼というものを表す色。この切り替えが非常に上手い。例えば、0:40からの館のシーンは全体的に青みがかかった感じですが、0:48の所で急に赤く変わり視覚効果として、はっきりと変化が見られる。こういった視覚的効果は、この作品の中で他にも何カ所かで使われてますね。また、KAKERIとKAKERI_rとを比較すると、修正前は0:55〜1:01のところがモノクロだったのですが、ここは修正後に赤や青に変更されており、これもこの考察の妥当性を示してくれていると思います。(キャラ紹介のところの翡翠琥珀の目が紫がかってるのは、その中間的なキャラだからってのは考えすぎか?)


とまぁ、そんなところかなぁ。まぁ心理学の専門家でも脳の専門家でもないんで、実際んところはよくわかりませんけどね(汗
月姫って作品があまりにも有名すぎて、既にある知識が勝手に補完してしまうため、このムビ自体がどれだけデモとしての効果があるかってのはわからないのですが、こういう点では信じられないくらいよく練られた作品だと思います。

[2nd impression]

まず、デモとしての効果云々に関しては、「月姫を知らない人がいるか?」という市場に対する効果ではなく、「デモ作品としてこの作品から視聴者がどんな情報を得られるか?」という意味で書いたつもりでした。

splineさんも仰ってる通り、この作品は月姫という原作の一部分のみしか表していませんし、よくデモに見られるキャラ紹介に関しても、テキストでは名前くらいしか情報が示されず、わずかに映像から推察できるのみ。

こういった点から、デモとして役に立っているのかなぁ・・・と疑問に思ったわけですが、ネットの普及した今の世の中、調べようと思えばいくらでも情報は得られますので、とにかく興味さえ持ってもらえればいいんだなと思い、書き込んだ後に考えを改めました・・・

そもそも商業デモのように販促のために幅広い層に向けて作る必要性はまったくないですし、MADってのは作品に対する愛を描くもんだと思ってますから、その作品の一部分が特に好きなのであれば、そこに共感してもらえば十分なわけですし。