[1st impression]

○選考理由
新劇場版の公開により、世間のヱヴァ熱が復活してきていますが、新劇場版よりも一年前にMAD界にエヴァ(RE TAKE)旋風を巻き起こしたこの作品について語ってみたいと思います。


○感想
作品については、他の方も言ってくれるでしょうから、(言うまでもない事かもしれませんが)私はソース補正の話なんかを

MADを見るに当たって、もちろんその作品の構成・演出の上手さは重要なのですが、その作品に対し受け手側が映像・曲や作者といった要素によって補正をかけてしまう、というのは人としてしょうがない事だと思います。原作をやったことがあれば作品の内容への理解度も高まるし、原作が好きであればそのMADを好きになりやすい。

私自身は別にエヴァを好きでもなんでもないんですが、周知の如くエヴァンゲリオンは一昔前に一大ブームを引き起こし、MADを見たり作ったりしている年代の方であれば、ほぼ間違いなく知っているかと思います。

このMADはその超有名なアニメの二次創作であるRE-TAKEという同人誌をソースにしている。RE-TAKEの内容についてはここでは特に触れませんが、同人誌なので、やはり元となったエヴァンゲリオンのストーリーとは差異があります。そして生物はそういった差異、「私の知っている○○とはどこか違う」といった事柄には敏感に反応するようにできており、その違和感がどこから発生したのか確かめようとする意志が多少なりとも発生するものだと思っています。その結果、こういう捏造作品への注目というのは、自然と作品自体の出来以上に高まることになります*1

で、ようやくこの作品の話に戻るのですが、やっぱりこの遺書という作品がスマスマだけでなく静止画M@D大賞でこれだけの支持をされたことには、単純に作品自体が良かったということ以上にこの要因が強く影響しているのではないか、ということです。これは、同新人大会で2位、そしてFateのセイバールートを忠実に描いたArthurian romances*2と比較することでも見て取れて、単純に技巧的な完成度で言ってしまえば後者の方が高いと思うのですが、インパクトは前者の方が強かった、と


また、これは逆に、有名ソースであるということは、それだけ多くのMADが生まれやすいということなので、その中に埋もれがちになるという側面もあります。よって、何かしらの独自性を生み出さねば、その中で生き残ることはできないのかもしれませんね。(ex.コンクル穴、Scene [2] SENTENCE、霧雨の国〜Niflheim〜、etc...)*3

[2nd impression]

勢いでごちゃごちゃと書いてみたものの、どのソースでどんなMADを作ろうがそれは作者の趣味なので、受け手としてはそれをただ受容するしかないのですよね。まあ、今まで作る際にそういうことを気にしたことがない作家さんがいたら、そういうことがあるということを頭に置いておいた方がよいかもしれません、ということで。自分が選者なのに、内容に関してまったく触れていないのですが、その辺はお二方が言いたいことは全て語ってくれたので、特に追記なしってことで(汗

また、記憶に残るには曲がMAD界隈の人に対してウケの良いものでなくてはならないというのもあって、その点に関しては、「埋葬のち天使」の方に最近書かれているので、そちらを参照ということで

*1:一応念を押して書いておきますが、これは別に、作品自体の出来が大したことないとか、有名なソースじゃないと捏造MADを作っても意味がない、とかいう事を言ってるわけじゃありません。ただ興味を引きやすいだけなので作品自体の出来が悪ければやっぱりダメだし、マイナーなソースで作られたMADの方がその作品の出来自体が評価されやすいわけで、それでもなお高評価を受けてるMADは本当の良作なんだと思います。

*2:http://stage6.divx.com/Japanese-Mad-Movie-Archive/video/1013971/%5BMAD%5D%5BFate/stay-night%5D-Arthurian-romances

*3:余談になりますが、つい先日まで開催されていたNameless☆オーケストラというイベントでは、作者補正を無くし、また、映像ソースの人気度が高い順に公開するという方針を取っていますが、個人的には作品自体の出来を公平に評価させたいんだったら、映像補正の受けにくいマイナーなソースの作品の公開順を先にし、有名な作品こそ最後の方にまとめて出すことで目立たなくする方が良かったのではないか、と私個人としては思っています。まあその辺りは主催者の性格のようなので仕方ありませんかね...