[1st impression]

「ヱヴァ」の話題を扱っているテキストサイト見ていると、映画の感想そのものよりも、10年以上おたくを続けているその人なりのエヴァに対するこだわりが見て取れることのほうが面白かったりします。M@Dという形態をとったこの作品でも、そういう「こだわり」があって面白いと私は感じました。例えば、音楽ソースは「和」のアプローチを大胆にとったもので、その意図はアスカの日本人らしさを表現するためだったのではないか、と私は捉えています。この作品では、青空の下勝ち気な表情で笑うバタ臭いアスカは1秒たりとも存在しません。内面に閉じこもり、自問自答自白を繰り返し、決着を付けようと思い悩むアスカ。その姿は、1:34のシーンでにおける2人のアスカとして象徴化され、鮮やかに描写されています。最後には「洋」の音楽であるオルゴールを挿入し、アスカの表層部分と絡め、今までの自分の激情すら客観視して独白するのですが、この展開はとても考えられて作られていると思います。「私」と「アスカ」のアンビバレントな感情・ジレンマを「遺書」という形式に託し、あらゆる手段で表現しきった、見事な作品ではないでしょうか。


表現方法、技術は、後の作品と比較すればこなれていなく、序盤と後半だとコマの使い方、キャラを印象的に見せ付ける配置に結構な差があります。0:25は、壁を効果的に使って心情を表現できるのではないかなとか。初めのほうは少し間延びしている印象があるのですが、1:09から一気に印象は変わります。大量のロンギヌスの槍で刺されることを過剰な白を使うことにより、視覚的な痛みとして表現し、弐号機が停止するまでを描ききったこのシーンは、本編中でも最も印象的な場面の1つです。そのシーン以降のテンションが張り詰めているからこそ、1:40秒のアスカの笑顔とセリフは、ひときわ鮮やかで痛々しい色を湛えています。そして、今まではシンジに拘泥していた独白が急に変わるのもここでして。「世界は美しいの?」という問い掛けは、1:55における「君と僕以外の幸せはどうなるのか」というテーゼとひとくくりで、とてもセカイ系らしい、作品に似合ったセリフだと思います。このパートは、その後の2:04から始まるシンジとの生々しい会話のスケールを調整するための布石としても確かな存在感をもって配置されているのではないでしょうか。こうして改めてじっくり見ると、とても構成が練られていて新しい驚きがありました。

[2nd impression]

「シンジは使徒だったんだよ!!」
「な・・・・・・なんだってー!!」

というのは、原作読んでないのでなんとも言えないのですが、アスカがシンジと相対していることを改めて印象付ける効果があるような気がします。使徒とかヒトとかより私はシンジに対して拘るんだ! という宣言っぽい印象ですね。私はアラエルによってヤられたアスカの内心のぐてんぐてんで、繰り返しに飽きたアスカは死を望み、過去の断片1つずつ感情を以って再認してると話を解釈してますが、たぶん違うのでしょう。


遺書ってタイトルについてですが、遠くない未来に自分が死ぬことを知っている前提に基づいた独白で、シーンはあくまで追体験に過ぎない、と考えたりすることも楽しみの一つでしょう。そう捉えると、過ぎ去った感情と今の感情が合わさっていると解釈可能な部分(0:51や1:32とか)があったり興味深いです。それにしても、こういう追憶をすることによってしか自分を認識できないアスカって本当に生々しい女ですよね(笑)