[1st impression]

私がこの作品について知ったのは完全に後発で、なんだか動画ニュースサイトとかニコニコで話題になっていたからStage6で見るといった、実に今のM@D事情を反映したような出会いをしたりしたのも面白かったり。故に詳細は全く存じ上げておりませんのでご了承を。

さて、実に総勢8名という人数での合作になっているこの作品、名前を連ねる作家陣は中堅以上揃いと静止画界隈にいる人ならばネームバリューだけでにやつけますね。で、私がこの作品に惹きつけられたのはそんな面々がここぞとばかりに素敵な演出をやってのけてくれたのがなんとも嬉しい。合作といいつつこの作品は各パート毎、実力の見せ付けあいの対決なんじゃないのかと。普段作っているような1:30〜の尺の作品では使えないネタをこんな時だからこそ大放出っていう印象を受けるんですよ。

全員にいえるのが曲、画像からPOPテイストな演出が主になっていて、曲のリズムを意識したつくりになっています(こんだけいて全員はずさねぇってのはすごい)。全体に大きな流れなんてのは存在しませんし、ひだまりスケッチというソースの必然性もあまり感じられませんが、この作品においてはどうでもいいと思います。それぞれの演出に浸るって楽しみ方が私的にはベストかなと。

演出部分については語ってると終わらないので好きな部分を限定して。
0:46〜0:52、taku氏のパート。具体的にこういうのをなんていうのか知りませんが、モーショングラフィック的な表現をうまく取り入れているなぁと思います。他界隈の表現を消化して取り込む、良い模倣というものではないかと。あと、前回の作品(第五回)では見られなかった部分をこうして見せられるとtaku氏の実力とか葛藤とかが少し伺えて楽しかったりする。
0:59〜1:07、aria氏のパート。動画のこういう使い方、好きすぎです。それだけに尽きます、やられたなぁって。効果音と合ってるのでグッときます。

その他とにかくなにやってんのか分からんかったり、感心したり、AE弄ったことある人なら自分の実力省みずに模倣したくなる部分山盛りです。連続して見てしまうのはノリのよさってのもありますが、なんとか(表現技法とかを)理解しようとやっきになるってのもあるんでしょうねぇ。

というわけで、「この作品は作家陣の実力の見せつけあいだ!」という立場で感想書かせていただきました。団体とか馴れ合いとか界隈とかいわれる部分のメリット(メリット、デメリットで語ると怒られそうですけど)を見せ付けられました。

[2nd impression]

>密度が薄く、ちょっと物足りないという印象
meimさんの仰る部分は確かにそうで、私は「合作だから」楽しめたと言うのが本音です。全体の密度よりも瞬間最大風速を重視して見ることが自然に出来たからだと考えています。

それ故に、
>合作以外の作品を是非とも見てみたい
というのもすごく自然な流れなんだと。

ちょっと考えてみると、この作品は「合作」としては従来の型通りの方法で行われているのですよね。合作でこんな作品が作られてくるなんてっ!って部分に踏み込んでくる作品ってのも見たいなぁと作品とは外れたところで思った。

[1st impression]

お二方が言われているように一見地味に見えるようでいて細かい所まで手が込んでいます。まだ出ていないところだと、フェードの調節とかモーションの調節(スライダーんとこね)とかってのは気にして弄るかどうかでずいぶん違うもんです。いかに見ていて自然になるかを考えて調節された動きは見ている人に違和感を与えないものです。一枚絵でこういう地味な所をしっかり決めてくるあたりにベテランっぽさが滲み出ますよね。

作品内容も分かりやすく編集されていて、何度か見ると原作を知らない私でもある程度把握できました(勘違いが含まれるだろうけど)。間奏部分を丸々劇物語に当てていて使い方うまいなぁと思います。文字による表現も最小限に抑えられているからこそ、最後の「そなたと生きる道を選ぶ」という部分が生きて、次のカットに素直に繋がるんだと思います。

劇の演者にあたる者達の境遇に関してはあえて小出しにして、あくまでもバンダナ娘が主役ととると全体的に散漫に感じる部分も、納得がいきます。こんだけ出演割合低いのにバンダナ娘が主役に見えるんだもんなぁ。splineさんがいうにはこれ見て原作プレイした人が多かったらしいけど、それは他のキャラはどうなんだろーって部分に惹かれたんじゃないかなって思います。

個人的要望を言えば一番最後(2:34〜)はこの作品をワンカットで表すとコレダッっていうので締められると見終わった時に余韻に浸れそうですが。

演出過剰になりがちな作品が増える最近の静止画M@D、同時に自分自身視聴していてその演出に酔ってしまって何かを見失いがちになることも多々あります(恥ずかしながら私も公開時たいして見ずに放置しておりました。再観賞の機会を与えてくれたsplineさんに感謝)。必要な内容を最小限の必要な演出で伝えることの重要さをこの作品から再確認しました。原作のよさを「生かす」演出ってのはこういうのなんだろうなと。

[1st impression]

不必要なテキスト・エフェクトを一切排しているため、一見すると大したことないようにも見えてしまうかもしれませんが
映像をキレイに見せるためには様々な技巧がこなされている作品ですね。splineさんが仰るとおり、一つ一つあげていくと本当にキリが無い感じなので
私が良いと思った点を3つだけ


まず1点は照明。
基本的な事かも知れませんが、かなり多くのシーンに追加されていて、単純にCGの芽生えがよくなるというだけでなく、
現代のシーンに暖かいイメージを与えることで、1:33〜1:50の過去を表す暗いシーンを強調するという効果も生み出しています。


2つ目も基本的なことなのですがブラーです。
普通、人間ってのは視野の中心以外の部分とか、見ているところと遠近差があるところはぼやけて見えてるわけですが
映像自体にブラーをかけてやることで、視点をコントロールできるし、また疑似的に視界がぼやけたような印象を視聴者に与えることも出来る。
また、0:08などでは完全に静止した画像をフェードインする際に横方向のブラーをかけることで、微妙な躍動感を与えたりもしていますね。


3つ目は、原作のロゴにも使われているブロック模様です。
このブロック模様とテキストという組合せを、作品の始めと最後、そして原作タイトルとムービーのタイトル部分で用いることで、全体の統一感を出している
また、最初の原作タイトルを出す前に、一度同じような構図を示すことで、伏線的な効果をなし
ただ単にタイトルを表示するよりも好印象を与えることができているのではないかと思います。


以上、他にも音のタイミングの取り方とか、静と動の使い分け等々見るべきポイントはいろいろ。
ほとんどイベントCGを並べているだけと言えなくもないのですが、紙芝居と切り捨ててしまうような作品ではなく
じっくり視聴するに値する作品ですね*1

*1:私自身、公開時にはほとんど見ずに放置していたので(汗

[1st impression]

見るべきポイントを列挙していけば、ノンストップで秒区切りに画面説明しなければいけないぐらいの高密度な作品です。この作品を見たことによって、カタハネをプレイしてみたという界隈外の人も結構居たとか。


この作品は、画像ソースの力によることが大きいです。シチュエーション、量ともに豊富で、背景もきちんと描き込まれたCGは、元ゲームから切り離して単体の静止画として見ても十分に観賞に耐えうるものです。けれども、ただ単に画面に羅列していくだけでは、これぐらいの出来にはならないと思います。このCGはどういう音楽と合わせれば、どういう雰囲気でまとめればより引き立つのかと考えられ、実践した結果なのでしょう。例えば、電車の場面で画面を動かせるとか、動作の後と前でどう画像が配置されるかちゃんと意識されたモーションとかが例として挙げられます。


その、モーションという技術に関しては定評のある氏の作品ですが、パンやティルト、クローズアップ等による画面の動かし方、持って行き方の冴えは今作が一番です。アングルや画角の違う画像を使って、文字に頼ることなく状況を説明することができています。口で言うのは簡単ですが、静止画M@Dで実行するとなるととても難しい。ヤマ場である0:41〜0:48は、ただただそういう見せ方があったのかと絶句するばかりでした。まさか最後にクローズアップ持ってくるなんて予想外です。他にも、サビでダイナミックな引きを使ったり、1:29からのシーンのような、徐々にシチュエーションがモーションによって説明される意外性は、複数回観賞を重ねても、というより重ねるごとに面白みを増してきました。


1:53のベースラインに合わせて点滅するキャラクターのクローズアップとか、最初は全然気付けませんでした。このシーンのような、テクいベースやスカ(でいいんでしたっけ?)の刻みが入った軽妙なリズムとの細かい同期がもっとあったらいいなと思いました。これはこれでシーンの分れが明確なので素晴らしいのですが。いつもは小さめの音量でM@Dムービーを再生している人も結構居ると思いますが、この音楽ソースではベースラインを追うと新たな発見があるかと思います。


2:19の観客を見せるところがワンクッションとして機能していたり、工夫が細かいです。こういう地味ながら効果的な演出の積み重ねが、この作品の完成度を上げている要因ではないかと考えます。何度も何度も再生して、そのたびに「エロゲーのCGって、余計な装飾がなくても綺麗だな」と感じました。とても綺麗で気持ちいい気分にさせてくれるムービーだと思います。

[2nd impression]


meimさんが言及しておられる照明効果に関してちょっと。レフ板のことか自然光なのか、というよりも完全ノンリニアな静止画M@Dの場合は「照明効果」とひとくくりにした方が何かと(語るのに)都合がいいですね。作業という点では同じことですから。と考えていて、この作品は結果として単光源ではなくなっている場面が何シーンかあって、その結果として短編映画の画面を連想させるのではないかと気付きました。1stではそんなこと一言も言ってませんが(笑) 被写体深度の表現と合わせてそういう見方をすると、控えめな表現の中に手の込んだ画面作りが見い出せます。


劇のことは気付かなくて、展開に緩急のあるよくある話なのか、としか。日常の中で劇の準備がシーンを作り出す、とか解釈しだすととても面白いですね。役者の内面・キャラクター・物語は、劇で演じられるものとは別のものだから、こうして歌のない間奏パートに持ってきたのかなと邪推とかが楽しいです。他にも色々出てくるでしょうが、1回書いたら感想が終わるわけではないですし、これからも楽しませて頂きます。

終わらない旅に恋して(2007)

作者:taku
選者:spline


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○選考理由
軽快なテンポで進む作品が今まで選ばれていないという単純な理由です。また、背景の使い方が上手いなど語る部分が多く、魅力的な素材だと思ったからです。

[1st impression]

実の所この作品はリアルタイムで鑑賞してなかったりします。スマ2前後は界隈から遠ざかり気味だったもので、一応。

まず、スマスマのような「新人の大会」でこのような作品が提出されたということに驚きがあります。M@Dを見て、界隈のM@Dに憧れるような人は漫画ソース(しかも二次)で動画ソースも使って、解釈ネタなんてのはいきなり作ってこないでしょう。そういう作品が提出されることがむしろ目標?であるスマにとっては皮肉な話かもしれませんが、大賞をとったのならば界隈の目は確かなのですな。(独自性の垣間見える作品として、第一回の不安定王氏がいますが、スマ運営自体は大会の意義とか考えているんでしょうかね、余計なお世話ですが)

作品の感想に入りますが、構成が良く練られていると思います。表現にはまだ新人ということで稚拙な部分が見受けられますが、起承転結のしっかりとした作りは、かっちりした作品の好きな私としては好印象。1:17〜の部分は中盤をしっかりと引き締め、サビへと入っていき、2:14〜の終わりへと続く部分のストーリーテリングの上手さが気持ちよく最後まで自然と引き込んでくれます。「だからやめろ」等の台詞の挿入方法なんてベタだけどたまらなくゾクゾクきますわ。気になったのは、アスカ→シンジという構図が重要な作品で「シンジが使徒であった」という部分が無駄に強調されているのが。RE-TAKE読んでないからかもしれませんが、そんなことどーでもいいやんって思ってしまった。(meimさんから頂いた補足では、RE-TAKE内ではかなり重要な設定であるということですので作者として譲れない部分であったかもしれません。)

蛇足っぽいですが、漫画ソースの表現方法として残り香氏の「ハナ」は非常に読み易い作りでしたが、この作品も同様に読み易いなぁと思いました。「M@Dの中で漫画を読ませる」っていうのは漫画ソースならではなので面白いなぁとなんとなく思った。

ソースに関する所では、エヴァって作品としては有名だけど和製M@Dのソースとしては以外と使われて無いように思っていましたがどうやら勘違いだったようです。個人的にはその勘違いも作用して新鮮に見られましたけど(笑)